トライオードTRV−35SEのメンテナンス    平成23年2月15日   


トライオードTRV−35SE


 トライオードのTRV−35SEのメンテナスを実施した。このアンプはEL−34PPで、最大出力45Wのメインアンプである。
 入力セレクターSWとVRが装備されているが、LINE−1、2、3 がVRを経由し、PRE-INはVRをパスしている。 シャーシー、トランスケースはワインレッドに塗装され、非常にしっかりしたつくりである。
下図は入力部、電源部を省略した増幅部のみの回路図である。



 下のグラフはDCバランス調整のみを行った状態で測定した歪率であるが、左右でかなりの差がみられる。特に右CHには何らかの異常が発生していると思われる。

 
 カソード結合型位相反転回路下段のプレート抵抗を調整(ACバランス調整)を行うことによって歪率はかなり低下した。 しかし、相変わらず右CHの歪率が良くない。残留雑音も1mVを超えていた。
 オシロで観測したところ、60HZが混入しているようである。そこで出力管(EL−34)を1本交換したところ歪率、残留雑音ともに低下した。
 NFBは6.5dB、残留雑音は右CH 0.68mV、左CH 0.78mV、DFは 1.7(オンオフ法)であった。
 回路定数の変更により、1KHZ歪率はかなり改善されたが、100HZ、10KHZの歪率が少し悪い。また、210KHZあたりにかなり大きなピークがみられる。 このピークを小さくすべく高域補償回路を調整したが、10KHZの歪率はさらに悪化した。このピークがこのアンプの特徴かも知れないので元設計通りとした。

 今回のメンテナンスで気がついた点は、次の通りである。
  1. 上にも書いているが、非常にしっかりした作りで、入出力端子には良品が使用されている。
  2. 45Wの大出力にも関わらず価格設定は低く抑えられていて良心的である。
  3. プッシュプルACバランスの狂いは、球の劣化ではない模様である。
  4. 出力管の不良は初期不良の可能性が高い。(ヒーターカソード間の漏洩電流)
  5. 低帰還アンプでダンピングファクターが1.7と低い。このことと210KHZにおけるピークが、このアンプの音を特徴付けていると思われる。
  6. 100HZと10KHZの歪率が少し悪いが、残留雑音を低く出来れば十分高性能アンプである。
  7. Pre−In端子の入力感度があまりにも高く(400mVフルパワー)使い勝手が悪い。別にVRを付けるべきと思われる。
  8. ただ、商品説明にプリメインアンプとあるのは如何なものか。入力端子を多くし、セレクターSWを設けたのみでプリメインアンプと呼んでは非常に紛らわしく、勘違いの元である。単に「入力セレクター付きメインアンプ」の方が良いのではないだろうか。



 以下の回路図、測定データは最終調整後のものである。ACバランスを調整した結果、100HZ、1KHZの中出力〜大出力における歪率低下が認められる。


inserted by FC2 system