スピーカー電線サイズとダンピングファクター 平成16年7月27日 

 スピーカー電線の直流抵抗値がダンピングファクター値(DF)に影響を及ぼすことは、よく知られていることであるが、最近のメインアンプでは出力インピーダンスが非常に低く設定されているため、スピーカー電線の直流抵抗値が無視出来ない状況にある。 その影響の度合いについてシミュレーションを試みる事にした。
 下表に、SPインピーダンス4、8、16Ω、SP電線延長6m(往復12m)の場合について、アンプ出力インピーダンス毎、スピーカー電線サイズ別のDF計算値を示す。 なお、ダンピングファクター(DF)及びSP電線直流抵抗は下記の計算式である。

 DF=Zs÷(Zo+Rs)  Zs=SPインピーダンス、Zo=アンプ出力インピーダンス、Rs=SP電線直流抵抗
 Rs=0.0172×L×2÷S L=電線延長(m)、S=電線断面積(mmsq)



 アンプの出力インピーダンスが低い場合、スピーカー電線の直流抵抗値がDF値に与える影響は非常に大きくなる。 SPインピーダンス=4Ω、出力インピーダンス=0.02Ω場合、0.75mmsqの電線ではDF=14以下、14mmsqの電線を使用してもDF=115程度しか得られない。 理論的最大値(DF=200)と比較してそれぞれ93.2%、42.5%の低下である。 SPインピーダンス=8Ωの場合は3.5〜5.5mmsqで14mmsqと同等のDFであるから、DF値を大きくしたい場合は、SPインピーダンスが高い方が有利である。
 一方、アンプの出力インピーダンスが高い場合、SP電線直流抵抗値がDF値に与える影響は小さい。 たとえば、出力インピーダンスが2Ω以上場合、0.75mmsqでDF値低下割合は12%以下、3.5mmsqで3%以下である。
 私のアンプ(36LW6×6SEPPOTL)の場合、出力インピーダンスは0.66Ωであるから、仮にスピーカー電線の直流抵抗が0ΩであってもDF値は12程度である。 この場合の電線サイズ別DF値は次の通りとなる。電線の延長は6m、往復12mで計算した。4.0mmsqは2.0mmsqをパラにした場合を想定している。
 
電線サイズmmsq
 DF値  
直流抵抗
0.75mmsq
8.6
0.275Ω
1.25mmsq
9.7
0.165Ω
2.0mmsq
10.5
0.103Ω
4.0mmsq
11.2
0.052Ω


 以上の結果から、アンプの出力インピーダンスがある程度高い場合(DF=10以下)、電線サイズ(直流抵抗)によるDF値の変化は小さい。 しかし、出力インピーダンスの非常に低いアンプの場合、SP電線直流抵抗によりDF値が大きく変化するので、気を付ける必要がある。 この影響がSP電線による音の変化と捉えられているのではないだろうか。 もしそうであれば高価なSP電線を使用する意味はまったくない。自分の希望するDF値になる電線サイズを使用すればよいことである。 最近のオーディオマニアはこの点についての考え方が本末転倒しているとしか私の目には映らない。



 スピーカーケーブル(電線)サイズとDFの関係は、上の表だけでは概念がつかみにくいので、グラフを作成した。 アンプの出力インピーダンス(Zo)は0.05Ωから5Ωまで5通りについて、電線サイズは0.75muから14muまで7種類について、また長さは0mから10m(往復では0〜20m)までを計算してグラフに表したものである。 これを見れば、Zoが小さく、電線サイズが細い場合は長さにより極端にDFが低下する様子が良くわかる。(平成17年12月21日)


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