定在波の検証     平成16年10月19日       

《 はじめに 》

「聴取位置(高さ)による定在波の影響」 では単一サイン波を用いて測定したが、今回はホワイトノイズも併用して定在波の原因を探ってみる。

《 測定方法 》

 室内の場所ごとの定在波発生状況を測定するには、碁盤の目状に細分した場所で、しかも測定高さを変えて実施する必要がある。 そうすると測定ポイントが非常に多くなり、膨大なデータとなるため、以下の11箇所の測定にとどめた。 なお、測定時のスピーカーはウーハーのみの使用であり、トーンコントロールはフラットにセットし、チャンネルデバイダー(クロスオーバー周波数312HZ)は接続した状態である。

  @ 通常の聴取位置(H=80cm)
  A 部屋中央(H=80cm)
  B 前部中央(H=80cm)
  C 後部中央(H=80cm)
  D 左側前部(H=80cm)
  E 右側前部(H=80cm)
  F 左側中央(H=80cm)
  G 右側中央(H=80cm)
  H 左側後部(H=80cm)
  I 右側後部(H=80cm)
  J 部屋中央(H=125cm)

    測定位置は右上図参照

 最初に、ホワイトノイズを使用して上記測定ポイントにおける低域(200HZ以下)レスポンス測定を実施した。
 次に、大きなディップが観測された周波数の単一サイン波を再生した状態で室内を移動し、音圧の高い位置を調べた。


スピーカー配置

 スピーカーBOXは横置き(ウーハー床から50cm)に変更している。(上部写真参照) ウーハーを床からもう少し高い位置に変えて測定を試みたかったが、架台としてコンクリートブロックを利用したので、50cmが限度であった。


  
《 測定結果 》

      @ 通常の聴取位置 H=80cm

F 左 側 中 央   H=80cm
      A 部 屋 中 央   H=80cm G 右 側 中 央   H=80cm
      B 前 部 中 央   H=80cm H 左 側 後 部   H=80cm
      C 後 部 中 央   H=80cm I 右 側 後 部   H=80cm
      D 左 側 前 部   H=80cm J 部 屋 中 央   H=125cm
      E 右 側 前 部   H=80cm アナライザー残留ノイズ


 末尾にディップ周波数一覧表、及び部屋寸法由来の定在波周波数一覧表を載せているが、各測定位置におけるディップ周波数と計算値との間には、ほとんど関連性が見出せなかった。 しかし、H=80cmでは後部(スピーカーから遠く)ほど、62HZのディップが大きくなり、部屋の中央(H=125cm)には68HZのディップが発生していることは判断できる。 68HZは天井高さ(2.5m)に由来する基準モード(0,0,1)の定在波である。
 何も無い部屋で壁の仕上げ等が全て同じであれば、もっと明確な結果が得られると思うが、このような不規則は造りの部屋では、良いデータが得られなかった。 しかし、音楽を聴く上ではこのような部屋が良いのかも知れない。
 次に、62HZのサイン波を再生した状態で部屋の中を移動して、その音圧を調べた結果、ほぼ部屋の中央低部(80cm以下)から、後部の高さ150cm辺りにかけての範囲(下図の赤い部分)が、耳で聴いた限りでは音圧が高かった。 なお、最も音圧が高い場所は、前部の両側天井付近、及び左後部天井付近であった。(下図の青い部分)
 62HZの音圧が、部屋の四隅のうち左側後部一ヶ所を除く三ヶ所の天井付近で高くなっていることから判断すれば、対角線方向の長さに由来する基準モード(1,1,0)による定在波の影響と思われる。 (鴨居上部の壁が影響している?)
 以上の測定データから考えて、これまでの聴取位置は62HZのディップが大きく、聴取位置として適当でなく、少し前の場所か、あるいは少し後の高い場所に聴取位置を変更する必要がありそうである。 しかし、この結果はこのオーディオルーム固有のものであるから、部屋寸法、構造、スピーカーの位置等が変われば当てはまらないと思う。
 定在波は、単に計算で求めた周波数で発生するとは限らず、いろいろな要素が絡んで発生周波数が決まっていると思われる。 この実験を通じて、一般住宅では定在波の発生を防ぐことは困難であり、少しでも影響の少ない聴取位置を見出すことが大切と感じた。 すなわち、定在波との「共存共栄」である。



62HZサイン波と耳による音圧分布測定


ホワイトノイズによる測定において観測されたディップ、およびその波長(m)



部屋寸法に由来する定在波計算値


《 コンピューター残留ノイズの影響について 》

 コンピューターの残留ノイズを測定したところ、60HZ、90HZ、100HZ、200HZに大きなピークが存在し、30HZ以下も上昇していた。 (アナライザー残留ノイズ参照)
 これらは誘導雑音、コンピューターの内部雑音と思われるが、除去は難しい。 幸いにして、ホワイトノイズを使用した測定データ上に現れていた影響は、60HZのピークと30HZ以下の部分のみであり、他の部分は信号に埋もれてほとんど観測されていなかった。 丁度62HZ付近に大きなディップが存在し、そのディップの中で60HZのピークが観測されていることが読み取れる。 この現象はほとんどの測定データに見られた。したがって、各データの60HZのピークと30HZ以下の上昇は無視することにした。


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