聴取位置(高さ)による定在波の影響 平成16年8月22日 |
《はじめに》
オーディオルームにおける定在波の問題は、マニアの方々の頭を悩ます非常に厄介な現象であるが、その対策はなかなか困難である。建物設計段階で定在波を考慮すれば影響を最小限にとどめることは可能であるが、完全に無くすることは不可能と思われる。 定在波の発生周波数はオーディオルーム固有のものであるから、部屋寸法から計算により導くことが可能である。 私のオーディオルームの寸法から予想される定在波のうち200HZ以下の値を右下表に示す。 この表は石井伸一郎氏が無線と実験誌に発表した資料に基づいて計算したものである。 なお、測定を実施したオーディオルームの平面図とスピーカー配置は第1図の通りである。 |
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《予備実験結果、及び測定方法》
右図は予備実験の結果であるが、マイクロフォン高さ0.85mにてサイン波、あるいはホワイトノイズを用いて測定した結果、いずれの場合も61HZあたりに大きなディップが発生している。 また、天井高さによる定在波の計算値は68HZである。ホワイトノイズを使用した測定では、わずかに68HZにディップが観測されている。 そこで、61HZと68HZを使って測定実験を進めることにした。 マイクロフォンの位置は第1図の通りである。マイクロフォンの指向性による影響を考えて、一方向のみでなく、前後、左右、上下の六方向で測定を試みる。 天井から0.2mおきにマーキングした糸を吊るし、三脚に取り付けたマイクロフォンをマーク位置にあわせて測定した。 音圧レベルは、パソコンソフトのレベルメーターを使用し、dB直読である。 なお、H=2.5m、2.4mの下向きと、H=0m上向きは測定不可能であるため、測定限界位置のデータである。 黄緑色のラインは −6dB/octの傾斜を示す。 |
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《マイクロフォン前向き測定》
マイクロフォンを前(正面)に向け、垂直方向にマイクロフォンを H=0mから0.2mおきに天井面まで移動させて測定した結果を右に示す。 61HZではH=0.5m辺りで音圧低下が発生し、68HZではH=1m辺りで音圧低下が発生している。 61HZは縦横対角線方向(基準モード1,1,0)による計算値にほぼ一致している。 68HZの音圧低下位置は天井高さの中間点1.25mとなるはずであるが、少し低い位置に発生している。 |
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《マイクロフォン後ろ向き測定》
次にマイクロフォンを後ろ向きにして上記と同じ手順にて測定した。 マイクロフォン前向きの場合と比較して、61HZでは音圧低下が高い位置へ変化しているが、68HZではほぼ同じ高さで発生している。 |
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《マイクロフォン右向き測定》
次にマイクロフォンを右向きにして上記と同じ手順にて測定した。 61HZでは、はっきりとした音圧低下が見られないが、68HZではH=1m辺りで音圧低下が発生している。 |
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《マイクロフォン左向き測定》
次にマイクロフォンを左向きにして上記と同じ手順にて測定した。 61HZではH=0.7m辺りの音圧低下が大きい。68HZは他の場合よりも少し低いH=0.8m辺りで音圧が低下している。 |
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《マイクロフォン上向き測定》
次にマイクロフォンを上向きにして上記と同じ手順にて測定した。61HZ、68HZのいずれにも音圧低下が見られない。 |
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《マイクロフォン下向き測定》
次にマイクロフォンを下向きにして上記と同じ手順にて測定した。 61HZではH=0.7m辺りで音圧低下が発生しているが、68HZでは音圧低下が見られない。 |
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《すべての平均値》
マイクロフォンを前後左右上下に向けた場合の測定値平均をグラフしたものが右図である。 単純に測定値を加算して6で割っただけの値である。この手法が正しいか否かは別であるが、実際に人の耳が感じる音圧に近づくと考えた。 |