ツイーターとスコーカーのタイムアライメント 平成17年8月12日 |
ツイーターとスコーカーの前後位置関係については、タイムアライメントと呼ばれ、ボイスコイルの位置を合わせれば良いとされているが、はたしてそれでよいのであろうか。
ドーム型ツイーターの場合はダイアフラムの位置が明確であるが、ホーン型ツイーターの場合はダイアフラムの位置で良いのであろうか。
また、コーン型スコーカーの場合も、高音と低音ではコーンの異なる部分から放射されていると思われる。
コーンが円錐形であることから、周波数により実質的な音源位置(振動板の位置)に若干の違いがあるのではないかと感じていた。
また、12dBのチャンネルデバイダーの場合は、一般にツイーターとスコーカーを逆極性に接続するが、クロス周波数と、SPの位置関係によっては、同極性に接続したほうが良い場合も生じる。 現在、ツイーターとスコーカーのクロス周波数は7,230HZ(波長47mm、半波長23.5mm)に設定しているが、振動板の位置が23.5mmずれれば、ツイーターとスコーカー同極性にしなければならないことになる。 そこで、テクニクス10KH50(ドーム型)、5HH17G(ホーン型)、フォステクスF120A(12cmフルレンジ)、三菱ダイヤトーンP−610(16cmフルレンジ)を使用した4通りの組み合わせについて最適位置を探すことにした。 なお、マイクロフォン位置は、高さ80〜90cm(スコーカ−の中心)、距離1mで測定した。 それぞれのスピーカーの実測断面を第1図に示す。各スピーカーをバッフル面に合せた状態に於けるツイーターダイアフラム、スコーカーセンターキャップの位置は以下の通りとなる。 |
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10KH50 | +8mm (バッフル面から前へ) | |
5HH17G | −16mm (バッフル面から後ろへ) | |
F120A | −4mm ( 〃 ) | |
P−610 | −16mm ( 〃 ) | |
測定方法は、F120AとP−610について、ツイーターを第1図の位置から5mmずつ移動して周波数レスポンスを測定した。測定にはテストCDのホワイトノイズ、CoolEdit2000を使用した。
なお、スピーカーの極性はツイーターとスコーカーは逆極性に接続している。
各測定時のツイーターとスコーカーの前後位置は「位置詳細図」を参照されたい。
《 測 定 結 果 》
《 ま と め 》 ドーム型ツイーター(10KH50)のダイアフラムは本体より前に張り出している。 そのためコーン型スコーカーと振動板の位置合せをするには、ツイーター本体を少し(10mm程度)後退させる必要がある。 今回の測定に使用したP−610とF120Aではコーン部の奥行き(前面からセンターキャップまでの距離)が異なっているためツイーターを後退させる距離は同じであるが、センターキャップの位置は異なっている。 つまり、F120Aの場合、高音はアルミ製センターキャップ付近から放射され、P−610の場合、10〜15mm程度前のコーン部分から放射されていると考えられる。 P−610は積極的に分割振動を利用する設計であるのに対し、F120Aは分割振動を少なくした設計であると思う。 次に、ホーン型ツイーター(5HH17G)の場合、今回の測定結果から、音波はツイーターダイアフラムの表面からではなく、実質的には少し(10〜15mm程度)前の位置から放射されていると考えれば辻褄が合うが、理由はよくわからない。 以上の結果から、ツイーターとスコーカーの前後の相対位置は、実質的な振動板位置によって決定しなければならない。 実質的な振動板の位置は、口径、構造等により異なるので注意が必要である。やはり、実測しなければ決定できない。 ただ単に同一バッフル面に取り付る、ボイスコイルの位置を合せるなどの方法では最適状態とはならない場合が多い。 特に、中音にホーン型スピーカーを使用した場合、ホーンが大型になり、ツイーターとホーンの上下方向の距離を離す必要がある。そのため狭い部屋では設置が難しいと思われる。 また、クロス周波数を高く設定した場合、波長が短いために僅かな前後位置の狂いでも大きなディップを発生している場合があり、要注意である。マルチシステムを自分で組む場合、実測が大変重要である。 今回の測定実験では、P−610と5HH17Gの組み合わせが一番素直なデータが得られた。 5HH17Gは20年以上前の製品であり、値段的にも安いものであるが、改めて見直した。 しばらく、この組み合わせを聴いてみることにする。 |