直結カソードフォロアードライブ    平成22年3月13日   

 平成22年1月から2月にかけて2台の直結カソードフォロアードライブシングルアンプを自作した。 1台目はEL−34(UL)シングル、2台目は5998Aシングルである。 直結カソードフォロアードライブの主な長所と短所を箇条書きにすれば次のとおりである。

《 直結カソードフォロアードライブの長所 》
  1. 出力管をプラス領域までドライブすることにより大きな出力を取り出すことができる。
  2. CR結合時に発生しやすい有害な過渡現象を改善することが出来る。
  3. 低インピーダンスドライブにより、入力容量の大きい3極出力管でも高域特性を伸ばすことができる。
《 直結カソードフォロアードライブの短所 》
  1. 真空管使用本数が増加する。
  2. カソードフォロアー段にマイナス電源が必要であり、必然的に電源部が複雑となる。カソードCHを使用すればマイナス電源は省略可能。
  3. 段数が1段増加することにより、高域時定数が1段増加する。
 以上の通り、長所もあるが、部品点数、コストの増加、回路の複雑化などの欠点もある。
 なお、出力増加効果については 5極管<UL接続<3極管(3極管接続)の順で大きくなる。つまり、出力管G1のプラス領域がいかほど残っているかである。 一般に内部抵抗が大きい球ほど、またグリッド電流の流れやすい球ほどその効果は大きくなる傾向がみられる。  
 つまり、内部抵抗の低い球ではG1プラス領域があまり残っていないが、ビーム管3結等、内部抵抗が高い場合はG1プラス領域が多く残っている。 その結果、最大出力を著しく増加させることが可能となる。
 内部抵抗の低い5998Aの直結カソードフォロアードライブで出力50%増の大きな効果が現れたのはなぜだろうか。 プラス領域までドライブ出来たことと、グリッド電流の影響を受けなくなったことの相乗効果かもしれない。

 現在では定電流ダイオード(以下CRD)という便利なものがあり、これをカソードフォロアー段カソード抵抗の代わりに使用すれば非常に便利である。 設計の自由度もはるかに大きい。今回の2作ではどちらもCRDを使用した。
 下図は6BL8(EL−34ULシングル)、6AQ8(5998Aシングル)におけるロードライン(赤線)と動作点を示したものである。 カソード抵抗の代わりにCRDを使用した時のロードラインは電圧軸に平行となる。
 6BL8ではプレート電圧158V(プレート側102V、カソード側−56V)、6AQ8ではプレート電圧197V(プレート側141Vカソード側−56V)のロードラインを示している。 このようにあまり高いプレート電圧は必要なく、もう少し低くても十分な出力電圧が得られる。 プレート電圧が低い領域の方が直線性が良好であり、μも大きくなる。
 6BL8では動作点116V(バイアス−7V)を中心にマイナス側44V、プラス側42V、6AQ8では動作点143V(バイアス−2.2V)を中心にマイナス側63V、プラス側54Vを送り出せる。(どちらもピーク値) 


直結カソードフォロアー使用時の注意点
  1.  CRDを使用した場合、プレート電圧(マイナス電源分を加算)はあまり高くする必要はなく、低くても十分な出力電圧が得られる。
     しかし、出力段が固定バイアスの場合、単に抵抗でドロップしたのみではグリッド電流が流れるとプレート電圧低下を招き、出力管バイアスが深くなる。 それを防止するためにはZD等で安定化し、グリッド電流をカバーできるだけのブリーダーの役目を持たせておけば良い。

  2.  カソード側マイナス電源が100Vを超えるとプレート電流が流れ始めるまでの間、HK間電圧が高くなるので耐圧の低い球では注意しなければならない。 一般にカソードマイナス時の最大定格は100Vの球が多い。 対策としてはマイナス電源側を100V未満のZDでクランプする、マイナスのヒーターバイアスを掛ける、あるいはヒーター回路をアースしないなどの方法がある。

  3.  カソードフォロアー回路における出力電圧(波高値)は「マイナス電源電圧−バイアス電圧」を超えることは出来ない。 また、CRDの最高電圧が100V(30Vの製品もある)に制限されることからドライブ電圧が高い場合は注意が必要である。

  4. 抵抗を使用したカソードフォロアー回路では少し高めのマイナス電源を用意しなければ動作点がバイアスの深い位置になり、プラス側ピーク出力電圧の低下を招き易い。 特にカソード抵抗が低い時はロードドラインが立ってくるので、シングルアンプやA級PPアンプでは抵抗値、動作点の設定に注意が必要である。

《 直結カソードフォロアードライブの使用例 》


カソードに抵抗を使用した固定バイアス例


カソードにCRDを使用した自己バイアス例

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