真空管SEPPOTLアンプは最低共振周波数で大出力となるか?
 以前より、「低RL用SEPPOTLアンプは最低共振周波数で大出力となるか?」という素朴な疑問を抱いていました。 理論的にはある程度導けることではありますが、果たしてどの程度の影響があるか、その現象を実験で確認する事が出来ました。

 ここで、このページをご覧の皆様に次の事をお願い申し上げます。 この実験は決して真空管SEPPOTLアンプの優位性を証明するために行うものではないこと、そして中出力以下の低RL用真空管SEPPOTLアンプは、あくまでも非能率的アンプであることをご承知ください。

実験の手順は次の通りです。
 6GW8(3)PPアンプと、17KV6A×6SEPPOTLアンプを使用し、下記(1)〜(6)の条件設定で、入力一定時と、クリップ開始時の各電圧(Vo、Vr、Vs)をオシロスコープで観察しながら測定した。 測定回路は 別図 の通りです。 Vo、Vr、Vs、からSPインピーダンス、および力率を計算し、アンプの出力を求める。この二つのアンプは、どちらもプレート電圧を低くして、最大出力が0.5W未満となるように調整したものです。

 (1) NFB:なし     正弦波単独
 (2) NFB:あり     正弦波単独
 (3) NFB:なし     各測定周波数と1400HZ正弦波の混合波(混合比3:1)
 (4) NFB:あり     各測定周波数と1400HZ正弦波の混合波(混合比3:1)
 (5) NFB:なし     各測定周波数と1400HZ正弦波の混合波(混合比1:1)
 (6) NFB:あり     各測定周波数と1400HZ正弦波の混合波(混合比1:1)


実験結果

 予想通り、低RLSEPPOTLアンプでは、fo付近の最大出力が増加している。テストした信号によって、その割合が異なるが、foでは400HZと比較して、1.3〜2.2倍程度最大出力が増大している。 その時、当然ながら、入力電圧は大きくしなければならない。
 第1図から第12図は、周波数対出力のグラフです。左側が6GW8(3)PPアンプ、右側が17KV6A×6SEPPOTLアンプです。 周波数対最大出力のグラフが3極管PPでは、ほとんど下に凸であるのに対して、低RLSEPPOTLでは上に凸となっている。 測定誤差の関係で、少し不自然な形のものもありますが、傾向は十分判断できると思います。 周波数対最大出力グラフでは左右の形がまったく異なっていること、入力一定時のグラフは、NFBの有無で様相ががらりと変化していることに注目してください。
 NFB無しの場合、fo付近におけるSPインピーダンスの上昇による影響がそのまま現れている。 すなわち、OPT付PPアンプでは最適負荷抵抗から外れて出力が低下しているが、SEPPOTLアンプでは最適負荷抵抗に近づいて出力が増加している。しかし、NFB有りの場合は左右のグラフの差があまりない。 つまり、foでは負荷抵抗の増加による出力電圧の上昇分がNFB増加となって打ち消され、ほぼ定電圧駆動状態になっている。 ・・・・・・・・・・・・ 私の薄学ではこの辺りが限度です。
 とにかく、OTL派にとっては大変嬉しい結果となりました。SPインピーダンスの上昇する帯域に限れば、低RL用SEPPOTLアンプが、規定の抵抗負荷で測定した最大出力値よりもずっと大きな実力を秘めていると感じた。
 しかし、これは最適負荷抵抗よりかなり小さいインピーダンスのSPを接続することによって生じる現象であり、大出力のSEPPOTLアンプ(最適負荷抵抗に近い状態で使用されるもの)ではこの現象は起きないか、あるいは僅かしか現れないと思われます。
 したがって真空管SEPPOTLアンプは無理して大型化する必要はなく、8Ω抵抗負荷で最大出力25Wもあれば、最も出力が要求される低域についても十分と思われます。
 ご意見、ご質問等は、Eメールでお願いします。



グ ラ フ 目 次      《 第 ** 図  をクリックするとグラフが表示される 》
 第  1  図    正弦波単独           最 大 出 力  NFB=0dB
 第  2  図    正弦波単独           最 大 出 力  NFB=12or22dB
 第  3  図    正弦波+1400HZ 3:1  最 大 出 力  NFB=0dB
 第  4  図    正弦波+1400HZ 3:1  最 大 出 力  NFB=12or22dB
 第  5  図    正弦波+1400HZ 1:1  最 大 出 力  NFB=0dB
 第  6  図    正弦波+1400HZ 1:1  最 大 出 力  NFB=12or22dB
 第  7  図    正弦波単独           入力電圧一定  NFB=0dB
 第  8  図    正弦波単独           入力電圧一定  NFB=12or22dB
 第  9  図    正弦波+1400HZ 3:1  入力電圧一定  NFB=0dB
 第 10  図    正弦波+1400HZ 3:1  入力電圧一定  NFB=12or22dB
 第 11  図    正弦波+1400HZ 1:1  入力電圧一定  NFB=0dB
 第 12  図    正弦波+1400HZ 1:1  入力電圧一定  NFB=12or22dB


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