《 帰還(電圧帰還)についての基礎知識 》
右の第1図は帰還回路のブロックダイアグラムである。入力電圧が eの時の出力電圧をEとすればE/e倍増幅したことになるが、これを外部利得(A)と言い、βを帰還率と言う。 そして1+μβを帰還量と言い、一般にdBで表される。また、μβをループ利得と呼ぶ。(ループ利得については後述) さらに、右下の(6)式の通り、μβが1より十分に大きい時は A≒μ/μβ =1/β となり、無帰還利得μが変化しても外部利得(A)はほとんど変化しなくなる。 しかし、一般の真空管アンプではμβはあまり大きくならないのが普通であり、少なくとも μβ>10 の条件を満たさなければ外部利得(A)の誤差は10%以内に収まらない。 少量の負帰還を施したアンプでは外部利得(A)を1/βで計算した時の誤差は非常に大きくなるので注意が必要である。 《 負帰還の長所短所 》 NFBには次のような利点がある。
増幅回路の段数、正確には時定数の個数により1箇所に付き最大90度の位相変移が発生する。 OPTを含まない2段増幅回路では最大位相変移は180度であるが、3段では最大位相変移は270度となって、必ず180度の位相変移を起こす周波数が存在し、周波数特性にピークが発生する。 OPTは低域に関しては1段の時定数であるが、高域に関しては2段に相当し、高域の位相変移は最大で270度以上に達する場合があるので注意が必要である。 以上のように帯域両端付近で180度の位相変移が発生した場合、その付近では、負帰還ではなく正帰還となっている。 その時、(3)式は(4)式のようになり、その時の外部利得(A)は A=μ/(1−μβ) と表される。そのため、ループ利得(μβ)が1であれば上式の分母が0となって外部利得は無限大、つまり発振する。 なお、発振の必要条件は μβ=1 かつ 位相変移=180度であるから μβ=1 のみでは発振しない。 しかし、発振に至らなくとも μβ=1 の近傍では外部利得(A)が増加し、ピークが発生する。 《 負帰還量の計算方法 》 負帰還量は1+μβであらわされるが、アンプを測定して簡単に得られるデータは外部利得Aと負帰還回路の定数から求められる帰還率βのみである。 裸利得μは(5)式を変形した(7)式にAとβを代入して求めることができる。負帰還量(1+μβ)も同様に計算できる。 また、(1+μβ)をdB換算すれば、一般に言われている負帰還量(dB)が求められる。 dB換算は エクセルの計算式を用いれば 負帰還量(dB)=20×LOG10(1+μβ) で簡単に求めることができる。 《 ループ利得(μβ)について 》 前出のループ利得(μβ)について考える時、ループ位相(φ)を切り離すことは出来ない。ループ 利得(μβ)とは、増幅回路から帰還回路をぐるっと一回りした利得であるが、右の第2図はその概念 図、第3図は負帰還を初段カソードに戻す、最も一般的な回路についての測定回路である。その方法は 負帰還回路を切り離しRkと同じ値の抵抗でアースに接続し、入力電圧(Ei)を一定に保ち、周波数を 変化させた時のEoを測定する。(Viの指示値:Ei、Voの指示値:Eo) そのとき、ループ利得(μβ)は μβ=Eo/Ei で求めることが出来る。なお、ループ位相(φ)はオシロスコープのX−Y入力を使用して求めること が出来る。入力信号を垂直入力、出力信号を水平入力に接続した時のリサージュ図形と位相角(φ)の 関係は以下の通りである。 φ=0° φ=45° φ=90° φ=135° φ=180° |