ザルツァ型低周波発振器
平成21年11月17日
左発振器部、右電源部
《 はじめに 》
30年前に自作した雑音歪率計には低周波発振器を内蔵していたが、測定の際アースラインがループになって雑音を拾う等の不都合を生じていた。
そこで専用の低周波発振器を製作することにした。
《 回路構成 》
ウィーンブリッジ発振回路では100HZの歪率が良くないのでザルツァ型を採用する。回路は下図のように2通りの方法がある。
左側はCにバリコン、Rに固定抵抗を使う方法、右側はCに固定コンデンサー、Rに可変抵抗を使う方法である。
なお、上の回路における発振周波数は2組のR1、R2、C、あるいはC1、C2、Rによって決定され、計算式は以下の通りである。
2個のC、2個のRは必ずしも同じ値でなくてもかまわないが、出来るだけ近い値に揃えなければ発振出力電圧が変化する。
そのときの発振周波数計算式は下の(3)式である。
また、R2/R1、C1/C2は4〜7程度とし、Rfにタングステンランプなどの非線形素子を使う。
電源部は別ケースに分け、発振器本体内部には信号ライン以外の交流を排除した。
バリコンを使うとケースが大きくなるので、フィルムコンデンサーと半固定VRを組み合わせる上図(2)の方式とする。
歪率計専用としたので発振周波数は100HZ、1KHZ、10KHZの3点のみの固定である。
3組の半固定VRを調整して各発振周波数を合わせ、且つ、発振出力電圧を一定にしたが、出力電圧の少々の差は使用上不便はない。
発振器部は初段に6BX6、出力段には6FQ7(パラ)SRPPを使用した3球構成である。
電源部には6CW5と12AX7によるリップルフィルター(定電圧回路)を組み込んだ。
SRPP段は特に6FQ7でなければ駄目と言うわけではなく、12BH7A(パラ)あるいは6BQ5、6AQ5などの3結でも良い。
この発振器でも当初の設計は6AR5であったが、6AQ5、6BQ5を経て6FQ7(パラ)に落ち着いた。
これは、単にヒーター電源容量の関係で6FQ7使用しただけのことである。
また、振幅安定装置には手持ちの110X5Wの電球を使用したが、この電球は常夜灯用のナツメ球である。
何個か購入し、歪率が低くなるものを選別して使用した。
回路定数は細かく調整する必要があるため、単体では得られない抵抗値のものを使用しているが、直並列にして作成した。
たとえば230Ωは300Ωと1KΩの並列、333Ωは300Ω+33Ωである。
《 歪率と調整 》
発振回路に使用するコンデンサーは出来るだけ計算容量に近いものを選別、あるいは並列にして作成しなければならない。
誤差が大きい場合、歪率の悪化、あるいは出力電圧の低下となって現れるので注意が必要である。
周波数はそれぞれ2個の半固定VRを調整してあわせたが、歪率最小となる値は必ずしも同じとはならない。
コンデンサーの容量誤差の影響もあるので各周波数ごとに出力電圧、歪率を確認しながら調整した。発振を開始しないときは正帰還量が不足しているのであるから、6BX6のカソード抵抗(230Ω)を少し大きくする。
大きすぎる(正帰還量が多い)場合、出力電圧は20V以上に達するが、歪率が悪化する。
振幅安定装置であるタングステンランプの熱惰性のためハンチング(電圧がゆらゆらする現象)が発生し、電圧が安定するまでに100HZでは10秒ほど待たねばならないが、歪率を0.01%以下にするためには致し方ないことである。
最終的な歪率は100HZ 0.006%、1KHZ、10KHZ 0.007%となった。
歪率計の残留歪を考慮すれば十分満足出来る性能に仕上がったと自負している。
なお、最大出力電圧は3.8Vと少し小さいが、メインアンプの歪率測定用としてはこれで十分である。
発振器部内部配線 中央下部白い電球が110V5W
電源部内部配線
シャーシー上部から調整可能とした6個の半固定VR
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