パワートランス巻き線温度測定   平成19年 4月13日    

  1. はじめに

     パワートランスは夏季にはかなりの高温となるが、内部の巻き線温度はそれ以上に上昇していると思われる。 しかし、巻き線の温度測定は外からは実施できない。 そこで巻き線の直流抵抗値を測定すれば巻き線の温度が計算できるのではないかと考え、この実験を始めることにした。 実験には17KV6A×4SEPPOTLアンプのPT(MX‐280)の1次巻き線を使用する。 なお、銅線の温度と抵抗値の関係は下記の通りである。


  2. 測定方法

     まず室温状態で数時間放置してトランス内部の温度を室温と同じにする。その状態の巻き線直流抵抗と室温を測定しておく。 これが基準となる。
     次に、アンプの電源SWを入れて1時間以上放置し、内部温度が上昇するまで待つ。 十分温まった状態で電源コードを抜き、1次巻き線直流抵抗を測定する。
     正確を期するためPT端子にて測定する。 なお、この直流抵抗測定に使用する計器はは少なくとも小数点以下第2位まで測定出来るものが必要である。 ブリッジがあれば最適であるが、速やかに測定しなければ正確な値は求められないので、今回はデジタルテスター(50Ωレンジ)を使用した。
     また、電源コードを抜いた瞬間から巻き線温度の低下が始まるので、30秒ごとに抵抗値を測定して、通電中の温度を推定することにした。
     パワートランスの負荷は下表の通りおよそ53%の状態である。



  3. 測定結果及びまとめ

     下表はSWOFF後30秒から10分まで30秒置きに測定した巻き線抵抗値と温度計算値である。 また、右は温度推移をグラフで表したものである。



     SWOFF後は急激に抵抗値が下がり、その後はなだらかに推移する。 SWOFF後の温度変化グラフに近似曲線(赤の点線)を挿入して通電時の温度を推定すれば約50℃となった。 測定時の気温は14度であるから、巻き線温度は36℃上昇していることになる。 その時の鉄心温度は推定35℃程度で20℃の上昇である。
     したがって、夏季の気温30℃の状態では巻き線温度、鉄心温度はそれぞれ70℃、50℃以上に上昇しても不思議ではない。 もっとも、パワートランスの温度上昇幅の許容値は50℃であるから、50〜60%負荷では問題ではないが、負荷率が高い場合はかなり高温になることが予想される。 安全のためには最大でも70〜80%の負荷率にとどめるべきではないだろうか。
     一般にトランスの効率は鉄損と銅損が同じである時に最も高くなるが、その時の負荷率は約75%である。


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