岡山県北部の方言
平成17年9月3日
岡山の方言は、「長門勇」氏のおかげで全国に知られた「おえりゃーせんがな!」(だめなこと)が有名ですが、
その他にも、なかなか難解な方言が多くあります。私の住んでいる岡山県北部では、一部山陰の方言も混じっ
ています。岡山県北部から鳥取県でも使われている「でーこーてーてーてー!」等は理解できないでしょう。
日本語訳は最後。
岡山に限らず中国地方の方言は、あまり綺麗な言葉使いではありません。良く聞く話ですが、東京都内等で岡山県
人同士がばったり会った時の会話は、周りの人達から見ればまるで喧嘩をしているかのごとく聞こえるらしいです。
男性同士の会話言葉は、「ひさしぶりじゃなー。 ひっさことおうてねーなー。 えーからどねーしょうたん?
おかんはげんきか?」といった調子です。女性同士の場合はも少し優しい言い方となるようですが、あまり上品な
話し方でないことは明らかです。大体の意味はお分かりと思いますが、念のため標準語訳は次の通りです。
「お久しぶりです。長い間会ってないですね。あれからどうしていたのですか? お母さんは元気ですか?」
岡山県北部に限らず中国地方の方言の特徴は、語尾の母音が変化することにあります。「ai」あるいは「oi」
が「e」に変化します。また語尾を省略する傾向もあります。たとえば、「風呂に入りなさい(huroni hairinasai)
。」は、「ふれーはいれー(hure− haire−)。」、あるいは「ふれーはいりんさい(hure− hairinsai)。」、「ふ
れーはりんちゃい(hure− hairinchai)。」等に変化します。この例では、県北(鳥取県を含む)と県東部(広島
県を含む)、県西部(兵庫県を含む)で異なっています。また、語尾に「じゃ」とか「じゃー」がつくことが多いです。
岡山県でも鳥取県境に近い地域では「だ」、「だー」が付きます。山陰言葉が混じっているようですね。私としては
「わけーおなごが じゃーとか だーとか つこーたら あんましかっこよーねーなー!」と思っています。
私は時々、島根半島沖へ海釣りに出かけますが、そのときの船頭さん同士の漁業無線の会話をひとつご紹介
します。
「いかが さばるだがやー」 です。さすがに私も即座に判断できませんでした。よく考えると「イカが掛りますか」
「イカが釣れていますか」の意味です。イカは、擬似えさに絡まって引っかかるようにして釣れますから、「さばる」
(「つかむ」とか「ぶらさがる」の意味)が使われています。
次の表は、中国地方東部における語尾の母音変化例の主なものです。他県の状況は良くわかりませんが、テレビ
等で聞いた限りでは、非常によく似ていると思います。
次に、岡山県北部方言の内、主なものについて、その使用例、標準語訳を下表にまとめてみました。広島県、
鳥取県等にも共通する言葉が多いと思います。この中でも特に注意しなければならない言葉は「はよーしねー
(hayo- sine-)」です。私たちは、日ごろ気にせずに使っていますが、知らない人が聞けば「早く死ねー!」と取
られかねません。この言葉は「早くしなさい(hayaku sinasai)!」(命令形)が「hayo- sine-」に変化したもの
です。上の「****なさい」が「****ねー」に変化する場合と同じです。しかし「早く死ねー!」を意味する岡山の
方言は見当たりません。決して使うことのない、また使ってはならない言葉だからです。
「でーこーてーてーてー!」の日本語訳
de-ko- は daikon の ai が e− に変化し、最後の on は o− に変化しています。つまり「大根」です。
次の te- も同じく tai の ai が e− に変化しています。 「たい」、つまり「炊く」の変化形です。次の te-
は teoi の oi が 省略されて te− に変化しています。前の te− と後の te− つなげれば taiteoite
「炊いておいて」です。
つまり「大根を炊いておいて(下さい)!」と言う意味です。
続いて、「わけーおなごが じゃーとか だーとか つこーたら あんましかっこよーねーなー!」の日本語訳は
次の通りです。
「若い女の子が じゃー とか だー
とか使ったらあまり格好良くないですね!」 です。少しはお分かりいただけたでしょうか?
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