出力インピーダンス測定法   平成17年 5月16日    

  1. はじめに

     メインアンプの出力インピーダンス(以下Zo)はスピーカーの制動に大きな影響を及ぼす重要なファクターである。 したがって、自作アンプのZo、あるいはダンピングファクター(以下DF)を知っておくことは大切と思い、その測定法について比較実験を行った。
     一般に、メインアンプのZo測定には「ON−OFF法」が使用されているが、この測定法は真空管アンプのように負荷抵抗値が変わると利得が変化する場合には、Zo測定値にある程度の誤差を生じる。 正確な値を求る方法として「電流注入法」があるが、ここでは「ON−OFF法」と「電流注入法」による測定を行い、双方の比較を試みる。

  2. ON−OFF法3例

     第1−1図〜第1−3図は「ON−OFF法」の例である。 第1−1図の方法では2個直列の8Ω抵抗のうち上段側を少し小さい値に変更すれば誤差は少なくなるが、あまり小さいとE1とE2の差が少なくなり、電圧の測定精度が悪いと誤差となって現れる。 また、第1−2図の方法では8Ω並列に接続する抵抗値を大きくした場合、第1−1図の場合と同じ現象が起きる。 第1−3図は負荷開放と規定負荷を接続した状態のアンプ出力端子電圧を測定する方法であるが、最も簡単である。



  3. 試験用アンプによる電流注入法

     正確を期するためには「電流注入法」によらなければならないが、特に低出力インピーダンスの試験用アンプが必要となる。 第2−1図、第2−2図は電流注入による出力インピーダンス測定法である。第2−1図の方法では試験用アンプの負荷抵抗となる  は可能な限り小さい値(0.4Ω以下)が要求される。 試験用アンプが真空管式の場合は出力管のプレート損失が非常に大きくなるので注意が必要である。   を大きくすればその点は解決出来るが、  は被測定アンプの負荷抵抗に直列であるから、負荷が基準抵抗値から外れて誤差を生じる。 これでは何のための電流注入法か判らない。 また、第2−2図のように  を省略した場合、試験用アンプの内部抵抗が負荷に加算される。 以上の2通りの方法はメインアンプが2台あれば、お互いを試験用アンプとして測定が可能である。



  4. スライダックを使用した電流注入法

     低出力インピーダンスアンプの代わりにAC100V電源が利用できないかと考え、実験を行った。 測定周波数は60HZしか使えないが、概ね30HZから10KHZの範囲では出力インピーダンスがほぼ一定であることに着目すれば、60HZのみの測定で十分と思われる。 第3−1図、第3−2図はそれぞれ第2−1図、第2−2図の低周波発振器と試験アンプをAC100Vと500VAスライダックに置き換えたものである。 スライダックの低圧域(1.5V以内)のインピーダンスを測定したところ0.3Ω程度の値を得た。 (ON−OFF法にて測定) なお、0.33Ωの抵抗を取り付けた状態でその両端電圧が1.65V以上になると電流値がスライダック定格の5Aを超えるので注意が必要である。 また、0.33Ω抵抗は20W以上の容量を使用しなければ、測定中にかなり熱くなる。 なお、この実験では、0.33Ω10W型を4本直並列にし、0.33Ω40Wにて使用した。
       この方式も上の場合と同じく0.33Ωの抵抗を取り付けた場合と省略した場合の2通りについて測定を実施した。



  5. 測定結果及びまとめ

     下表は、17KV6A×6SEPPOTLアンプとEL−34ULPPアンプについて上記各方法により測定した Zo、及び DFである。 なお、EL−34ULPPアンプは試験用アンプによる電流注入法は実施していない。 また、試験用アンプによる電流注入法の測定には70HZのサイン波を使用した。 スライダック電流注入法と比較するためには60HZを使用すべきであるが、残念ながら発振器の60HZ出力が少し不安定であったので、70HZに変更したが、その影響はほとんど無いと思われる。
     EL−34ULPPアンプの場合は、いずれの方法もほぼ同じ結果となった。 17KV6A×6SEPPOTLアンプの場合、測定法により少しばらつきがあるが、電圧の測定誤差の影響ではなく、ほかに原因があると思われる。 SEPPOTLアンプとOPT付きPPアンプの違い、及び、2台のアンプにNFB量の差があることが影響していると考えられる。 第1−3図の方法が一番誤差が大きいと予想していたが、意外と正確な(電流注入法との比較)測定結果が得られた。
     「ON−OFF法」でも実用上十分な精度で測定可能と思われる。 しかし、被測定アンプの種別、動作状態等が異なれば、上記3通りのON−OFF法では誤差が少し大きくなる場合がある。 やはり、正確なZo測定は、低出力インピーダンスの試験用アンプを使用した「電流注入法」によらねばならないが、今回テストしたAC100Vとスライダックを使用した「簡便電流注入法」も十分使用可能である。

     ON/OFF法による出力インピーダンス計算Excelシート に測定したE1、E2を必要なセルに入力すれば出力インピーダンスとDF値を求めることができるので活用して頂きたい。



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