直結カソードフォロアードライブ5998Aシングルアンプ


直結カソードフォロアードライブ5998Aシングルアンプ


《 はじめに 》
 前作のEL−34シングルに続き、5998Aシングルアンプを製作した。このアンプも直結カソードフォロアードライブA2級アンプとして出力増加を狙った。

《 使用部品 》
 OPTはU−808(タンゴ)、電源トランスはMP−624(INSTANT)、CHコイルはC−520(タンゴ)を使用、ケースはリード製S−4に裏蓋を取り付けたものである。
 出力管の5998AはGE製、6267はNEC製、6AQ8は東芝製を使用した。 5998Aは内部ユニットのバラツキが多い球であり、OTLアンプに使用した場合は熱暴走を起こし易いが、自己バイアスでは問題ない。

《 回路構成 》
 カソードフォロアー回路のカソード抵抗には定電流ダイオードE−102(1mA)をパラで使用したが、なかなか便利である。
 一般に直結カソードフォロアードライブではマイナス電源が必要であるが、今回はB電源巻き線(200V)から0.47μFと33KΩで分圧整流して供給した。 出力管バイアス電圧以上のマイナス電圧を用意しなければ十分にドライブできないので注意が必要である。 今回は56Vとした。また、初段6267のスクリーン電圧は60V前後が歪率の最良点であった。SG電圧の調整はかなり微妙で、ブリーダー抵抗を可変して歪最良点を探さねばならない。 終段との歪打消し動作を行わせる訳である。
 右上の5998プレート特性図はネットで検索したTung-Sol製5998である。(5998Aのプレート特性は見つからない。)
 このアンプの動作点はプレート電圧185.6V、グリッドバイアス−34.2V、プレート電流73.6mAであるが、この特性図にあてはめてみれば、もう少し内部抵抗が低い(プレート特性がもっと立っている)と考えなければ辻褄が合わない。 5998と5998Aは最大定格は同じであるが、全く別の球と考えた方が良さそうである。それともバラツキの範囲内であろうか。 いずれにしても、この定数でプレート損失は定格内に収まっている。

《 最大出力、測定結果 》
 最大出力は5W/LCH、4.9W/RCH(クリップ開始)が得られたが、直結カソードフォロアーの効果と思われる。 CR結合ドライブ時の計算上出力は3.7W程度であるから、U−808の定損失(0.95dB/2KΩ)を考慮すれば50%近く増加していることになる。 3極出力管の直結カソードフォロアードライブ方式は非常に効果的である。
 クリップ時の波形もはっきりとしたクリップ波形ではなく、丸みを帯びたものである。
 NFBは12dB、残留雑音は0.25〜0.3mV程度であり、EL−34(UL)シングルと比較してかなり低歪となった。 低域は思った以上に伸び、高域のピークも500KHZ付近の小さなものだけで、かなり高性能に仕上がったと思われる。 10KHZ矩形波応答は少しオーバーシュートが発生している。0.47μF並列時の変化が多いが問題はないであろう。

《 その他 》
 高域の暴れが少ない原因は5998A内部抵抗の低さと思われる。 一方、B電源に含まれるリップル電圧はOPT1次インピーダンスと出力管内部抵抗で按分されるため、内部抵抗が低い出力管では出力端子に現れるリップル電圧が大きくなる。 そのため、B電源リップルは可能な限り除去しておかなければならない。不十分な平滑回路では残留雑音の多いアンプに仕上がってしまうので注意が必要である。
 このアンプは初段と出力管で偶数次歪の打ち消し動作を行わせている。 ただし、初段が3極管では偶数次歪のコントロール幅が小さく、球種を変えなければ歪打ち消し動作を上手く行うことが難しい場合も生じる。 特に、初段にSRPPを採用した場合、その段における歪発生が少ない反面、出力段との歪打ち消し効果はあまり期待できないことになる。
 その点5極管ではSG電圧の調整により偶数次歪をコントロールすることが可能であるから、出力段との間で歪打ち消し動作を行う場合は有利である。 内部抵抗が高い影響で高域の位相補償は難しくなる傾向であるが、5998Aなどの低内部抵抗管との組み合わせでは良い結果が得られる。

 5998Aはプレート電圧180V程度でかなりの出力が得られ、直線性もあまり悪くないのでもっと多用されてしかるべきと思う。 しかも、1本で他の出力管2本分であるから価格的にも安い。また、パラシングルとすれば9W以上の出力が得られる。
 しかし、パラシングルにするには、使用できるOPT(1次インピーダンスが1KΩ以下でDC許容電流200mA前後)が限られることと、200VDC350mA程度のB電源巻き線を備えた適当なPTが見当たらないことが難点である。



背面


内部配線





LCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)

RCH 8Ω 1W 矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)







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