7233×8SEPPOTLステレオアンプ1号機  平成21年3月27日   



 このアンプは平成21年9月に分解し、7233×8SEPPOTLステレオアンプ2号機に変身しました。

  1. はじめに
     以前から6C19Pを使用したSEPPOTLアンプを作りたいと思っていたが、同等管である「7233」8本セットが10000円で販売されていることを知り、早速16本購入してこのアンプを製作した。

  2. シャーシー
     シャーシーはリードS−2を使用し、底板はホームセンターで購入したアルミ板で自作した。側板は手持ちの木板を加工し、水性ニスで仕上げたものである。 シャーシー本体はシルバーメタリック塗装を施した。シャーシー本体、底板の厚みはそれぞれ1.4mm、1mmと強度不足が懸念されるので、底板とシャーシーとの間に支柱を1本取り付けることにした。

  3. 電源トランス
     OTLアンプに使用できるPTは市販品には見当たらないので、いつものように特注した。出力段のB電圧は少し低く、90V(1.2A)の倍電圧整流である。
     7233を16本直列にし、AC100Vで点火することも可能であるが、調整の容易さから6.3Vで点火することも可能な容量とした。 そのため、345VAの大型トランスとなった。

  4. ドライブ段の設計
 このアンプも個別バイアス回路を採用したため交流負荷は約15KΩと低い。
 左の図は12BH7Aプレート特性図に34KΩの直流ロードライン(青線)を引き、バイアス−7Vとの交点を動作点とし、15KΩの交流ロードライン(赤線)を引いたものである。
 この図からプレート供給電圧445V、カソード電圧91V(実効プレート供給電圧354V)、プレート電圧260V、バイアス−7Vの条件で6V(ピーク値)の入力電圧時、プラス側 54V、マイナス側 77Vの最大出力電圧(ピーク値)が得られることが読み取れる。 グリッド電流の影響を避けるため、−1V〜−13Vで計算している。
 以上の結果から、ドライブ段を12BH7Aパラとしなくても、バイアス電圧が−35V付近である7233を十分ドライブ可能と判断した。
  1. DCバランス調整
     8本セットを2組、計16本の7233について、プレート電圧150V、バイアス電圧−34.6Vの条件でプレート電流を測定した。
     左の表はその結果である。選別して組み合わせされているはずであるが、かなり差が見られた。やはり、個別バイアス方式にしなければ良くないと思われる。 もう少し多量に入手し、マッチングをとれば必ずしも個別バイアス方式でなくても対応できるが、ドライブ可能であれば個別バイアス方式が安上がりである。
     5998A×4SEPPOTLアンプと同様に、難関はDCバランス調整である。8個の半固定抵抗を交互に調整し、片CH8本すべてのプレート電流、プレート電圧を同じにしなければならない。
     ここで、ヒーターを6.3Vで供給した成果が表れた。まず最初に上段2本、下段2本を挿入してDCバランスを調整する。次に、その4本を取り去り、別の4本を挿入して最初の4本と同じに調整する。 最後に8本すべてを挿入して調整する。
     7233は6080、5998Aなどの場合と比較して短時間でDCバランス調整を終了することができたので、かなり扱い易い球と思われる。
  1. 定増幅型DFC方式
     この名称は武末氏が命名されたものであるが、電流帰還を利用して出力インピーダンスを可変、すなわちDFを可変、なおかつ利得を一定とする方式である。 今回の方法でDFは7.8〜1.5まで5段階に調整することが出来た。ロータリーSWにより電流帰還量を増減し、同時にNFB量も変化させるわけであるが、実際に使用してみて、大変便利な方式である。 しかし、SEPPOTLアンプでは出力端子の一端はアースしなければならないので、電流正帰還によって出力インピーダンスを下げる方法が利用できないことが欠点である。 ロータリーSW各位置におけるDF値は回路図を参照されたい。
    (帰還回路で位相反転すれば正帰還とすることが可能である。)

  2. 測定結果
     最大出力はプレート電圧を±120Vと低めに設定していたにも関わらず、予測をかなり上回る16W/8Ω、25W/16Ωが得られた。
     歪み率は1W/8Ω時0.2〜0.27%、10W/8Ω時1%前後とまずまずの結果であるが、100HZ、1KHZ、10KHZがほぼ同じカーブを描いている。 残留雑音は両CHとも0.1mV未満とかなり優秀である。
     定増幅型DFC方式は思わぬところで利点が見つかった。つまり、全帰還量は18.5dBと一定であるが、電流負帰還を増加したとき、電圧負帰還量が減少するため、容量負荷時の10KHZ矩形変化が少なくなることである。
     高域補償はNFB抵抗並列の330PFのみであるが、周波数特性は200KHZで−3dBと広帯域アンプに仕上った。もちろん、1MHZまでにピークやディップは見当たらない。これが、SEPPOTLアンプの特徴である。
     なお、このアンプは打ち消し回路を省略している。最初PNF型打ち消し電圧を注入することを試みたが、反って歪率が増加したので、単にドライブ段のプレート抵抗を調整するのみに止めた。

  3. その他
     もう少しプレート電圧を上げれば最大出力20W以上が見込めるが、小さなMT管であることを考えれば、あまり無理をしない方が良いであろう。 7233はプレート特性も比較的良好であり、μも4である。プレート電流の安定性にも優れ、小規模OTLアンプに使用する価値はあると思われる。
     定増幅型DFC方式とすることは、シャーシー加工が終わった段階で思いついたため、ロータリーSWの取り付け場所、配線に苦労したが、非常に良い結果が得られたので満足している。
     残留雑音が0.1mV未満であるにもかかわらず、ツイーターに耳を近付けると「ジー」という雑音が聞こえていることに気がついた。 H−K間の漏えい電流の影響と思われたので、前段ヒーター回路にハムバランサー(100Ω)を取り付けたところ、フリッカーノイズの「シャー」のみとなった。
     中央部に取り付けたタイムリレーと電解コンデンサーが非常に熱くなるので、後方のPTとの間に熱遮蔽板を追加した。

     PTとシャーシーの温度上昇が著しいので、平成21年5月に7233のヒーターを16本直列にしてAC100Vで点火する方式に変更した。
     これで少しPTの温度上昇を抑えることが出来たが、シャーシーはかなりの高温となる。そこで底板に冷却ファンを取り付ける改造を行った。 その結果、2時間経過後のPTの温度は50度未満と約20℃の上昇に抑えることが出来た。 ファンはDC24V80mm低騒音型(20dB)を使用し、供給電圧をDC20Vに落としているので騒音はほとんど気にならないレベルとすることが出来た。

     このアンプは平成21年9月に分解し、7233×8SEPPOTLステレオアンプ2号機へ変身しました。


内 部 写 真

背 面 写 真

冷却ファン 底板に空けていた通風孔はガムテープで全て塞いだ


7233×8SEPPOTLステレオアンプ(LCH)8Ω0.76W矩形波
100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)DF=7.8
10KHZ(0.47μF)DF=3.8
10KHZ(0.47μF)DF=2.0
10KHZ(0.47μF)DF=1.5

7233×8SEPPOTLステレオアンプ(RCH)8Ω0.76W矩形波

100HZ
1KHZ
10KHZ
10KHZ(0.1μF)
10KHZ(0.47μF)DF=7.8
10KHZ(0.47μF)DF=3.8
10KHZ(0.47μF)DF=2.0
10KHZ(0.47μF)DF=1.5





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