マルチチャンネル方式のスピーカー極性パートV   平成16年10月15日改訂   

 前回のパートUでの課題「リスニングポイントにおける測定」を実施したが、前々回と違う結果になってしまった。
 測定時のスピーカーおよびマイクロホンの配置は下図の通りである。なお、前々回の測定にはスコーカーにFF−125Kを使用したが、今回はP−610を使用した。 他の機器は前回と同じである。
 以下の条件でスコーカーの極性を変えて測定を実施した。なおマイクロホンの高さ82cmは、リスニング用ソファーに座った状態の耳の高さである。

 その後、スピーカーの配置を変更したため、音の干渉についての測定を再度実施した。 その結果は「聴取位置移動による音の干渉現象」のページにアップ済み。




《 測定条件及び測定結果 》

     (1) スピーカーとマイクロホンの距離2m、マイクロホン高さ82cm  第1図、第2図
     (2) スピーカーとマイクロホンの距離2m、マイクロホン高さ92cm  第3図、第4図
     (3) 条件(1)と同じ設定でツイーターを2cm後方へ移動    第5図、第6図
     (4) マイクロホン高さ92cm、右へ10〜20cm移動   第7図〜第8図
     (5) マイクロホン高さ92cm、右へ30〜40cm移動   第9図〜第10図




 マイクロホンをリスニングポイントにセットした測定(第1図、第2図)では、スコーカーとツイーターは極性を変えても大きな変化は見られなかった。 強いて言えば、同極性にした場合はクロス周波数付近の暴れが小さくなり、9000HZ以上はレベルが数dB上昇した。 定在波の影響をかなり受けているにしても、第1図(すべて同極性)と第2図(スコーカーのみ逆極性)を比較して前者の方がウーハーとスコーカー、スコーカーとツイーターのクロス部分のつながりが良いと判断できる。
 FF−125Kをスコーカーに使用した場合、スコーカーとツイーターは逆極性が良かったのであるが、なぜだろうか?。 私は、P−610とFF−125Kの構造の違いに原因が有ると思う。P−610の方がスピーカー前面からセンタードームまでの距離が2cm弱遠くなっている。 前回の測定でスコーカーとツイーターの前面を揃えた場合は同極性が、ツイーターの位置を2cm後に下げると逆極性のつながりが良くなる現象とも合致する。 それらを考慮した測定結果を第3図〜第6図に示す。 ツイーターを2cm後退させると逆極性がフラットになる。なお、10cm程度のマイクロホン高さの違いによる影響は少ないと思われる。 第7図〜第10図はマイクロホンを右へ移動した場合の測定結果であるが、左右の干渉による影響が強く現れ、これが同じスピーカーかと思うほどの変貌ぶりである。

 もっと詳しく知りたい方は 《 志賀@高槻「オーディオの科学」聴く位置でこんなに変わるf特 》へ。

 最終的にはウーハー、スコーカー、ツイーターをすべて同極性接続し、スピーカーから2m離れた場所をリスニングポイント(耳の位置)に決定したが、わずかの横移動が、これほど測定データに影響するとは意外であった。 部屋の中で最良のリスニングポイントは狭い範囲に限られると思われる。 極論すれば、二人が同じ部屋で同時に音を聞いていても、二人の聞いている音にはかなりの違いがあることを意味している。 場合によっては、すばらしい音と癖のある音が隣りあわせなっていて、僅かなリスニングポイントの違いが雲泥の差となって現れる可能性もある。 その差が少しでも小さくなるようにマニアの方たちが努力しているのではないだろうか。 しかし、多くのオーディオマニアにとってリスニングルームの改造は夢であるが、実現はなかなか難しいのが現実と思う。 限られた機器と限られた場所で、自分にとって最良の音を追い続けることが大切と思う。  この一連の測定を通して音作りの難しさを痛感するとともに、以前と比較して少し音が良くなったと自負している。

 やはり、「オーディオは他人が足を踏み入れることの出来ない自己満足の世界」 であろうか。


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